※ ただの近況です。


10年前、謎の留年に巻き込まれた僕は、やたらと長い夏休みを過ごしていた。

そのうち1ヶ月半ほどは、ニューヨークにいた。名目上は語学学校に通っていることになっていたが、実態はほぼ遊んでいただけだ。

1年近い空白をどう使うかを考えたり、当時いた循環器内科の病棟で理不尽な思いを抱いたり、まあいろいろあった時期だった。

ちょうど同じ頃、同期たちも何人かニューヨークに来ていた。観光したり、ダラダラしたり、ロサンゼルスにいる映画監督の卵に会いに行ったり、NASAの研究所で働いている人を訪ねたり。

自由なのに、将来には迷っていて、ずっと何かに翻弄されている感じの日々だった。

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その観光グループの中に、当時19歳の大学生がいた。

英語は「Rabbit」しかわからない、というレベルだったらしい。

そして僕は、その頃だいぶトゲトゲしていたようで、その子からするとかなり怖い人だったそうだ。「つまらないと思ったら相手にしない人」だったと言われた。

まったく記憶にない。ないのだが、たぶん本当だと思う。

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なぜかそこから10年、ゆるく繋がり続けていた。

そして昨夜、金沢で再会した。

結婚して、子どもがいて、それぞれの悩みを抱えながら、立派に生きていた。

「当時の古賀さんはひどかった」と改めて言われたので、罪滅ぼしのつもりで、いいフレンチをご馳走した。楽しい夜になった、と思う。少なくとも僕は楽しかった。

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家に帰ってから、当時の写真を探した。

見つかったのは、タイムズスクエアでオムツを履いていた変わった人の写真だけだった。肝心の、一緒に過ごした人たちの写真がほとんどない。

あの頃は、写真を撮るという発想がなかった。目の前のことで手一杯だったし、10年後に誰と会っているかなんて、考えたこともなかった。

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前に、誘ってくれた人に折り返さないまま、その人が亡くなってしまった話を書いた。それ以来、会いたい人にはすぐ会いに行くようにしている。

最近はそこに、もうひとつ増えた。記録を残すようになった。

写真を撮る。何を話したかを少しメモする。以前の僕からすると、だいぶ面倒くさいことをやっている。

でも、ある瞬間に一緒にいた人との時間は、あとから思い出になる。そのときは何でもない一日でも、10年経つと、それしか残っていなかったりする。オムツの人の写真だけでは、さすがに困る。

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人生は、短いようで長い。

人との出会いは悩みも連れてくるけれど、それ以上に幸福を持ってくる。10年前に自分を怖がっていた19歳と、金沢で酒を飲んでいるとは思わなかった。

よし、来月もどこかに行く。しばらく会っていない人にも会いに行くぞ。