一緒に働く人について、最近ますますはっきりしてきた結論がある。
素直でいいやつが最強。
スキルも経験も、もちろん大事だ。でもそれよりも圧倒的に効いてくるのは、明るくて、素直で、感じがいいこと。これだけで、だいたい全部うまくいく。
身も蓋もない結論だが、何年かやってみて、これ以上のものが出てこない。
なぜ素直さが効くのか
「いい人がいい」という話は、精神論に聞こえがちだ。でも僕は、これはかなり具体的なメカニズムの話だと思っている。
素直な人は、情報が入る。
指摘されたことを、一度そのまま受け取れる。受け取れるから、試せる。試せるから、結果が出る。結果が出るから、次の指摘も受け取れるようになる。このループが回る。
素直でない人は、指摘が入る前に処理されてしまう。「でも」「いや」「そうは言っても」が先に来る。そこで情報が止まるので、ループが回らない。
だから素直さというのは性格の良し悪しの話ではなく、学習速度の話だ。同じ時間を過ごしても、伸びる量が何倍も変わる。スキルや経験は後から積めるが、積む速度そのものを決めているのがここなので、順番として先に来る。
素直と従順は、まったく違う
ただし、ここは慎重に書かなければならない。
経営者が「素直な人がいい」と言うとき、それが実際には「言うことを聞く人がいい」を意味している場合が、けっこうある。僕はそれとは違うことを言いたい。
素直 は、一度そのまま受け取れること。
従順 は、反論しないこと。
この2つはまったく別物で、しかも組織に与える影響は正反対だ。
従順な人ばかりの組織は、意思決定が速くなったように見えて、実際には経営者の判断ミスがそのまま実行される組織になる。誰も止めない。僕は自分の判断がしょっちゅう間違っていることを知っているので、これは普通に怖い。
理想は、一度ちゃんと受け取ったうえで、おかしいと思ったら言う人だ。受け取らずに反論する人でもなく、受け取ったまま何も言わない人でもない。
順番の問題だと思っている。まず受け取る。それから考える。それから言う。この順番が守られていれば、議論は前に進む。
「感じがいい」の中身
もうひとつ、うちの仕事は人と話すことが中心なので、コミュニケーションの比重が大きい。
いろんな話題にある程度ついていけること。できれば知的なやりとりができること。これは正直、望ましい。
ただ、誤解されると困るので書いておくと、これは難しい話ができることではない。専門用語を並べられる人がほしいわけでも、教養を披露できる人がほしいわけでもない。
僕が言っている「知的なやりとり」は、もっと単純だ。
ちゃんと相手の話を聞いて、自分の言葉で返せる。
これだけ。
聞いているようで聞いていない人は多い。相手が話し終わる前に、自分が次に言うことを考えている。だから返事が、相手の話とかみ合っていない。用意していた答えが出てくるだけになる。
自分の言葉で返す、というのもそうだ。どこかで聞いた言い回しや、正解っぽいフレーズではなく、その人が自分で考えて出した言葉かどうかは、聞いていればわかる。
シンプルなことだが、これができる人は本当に強いし、長く一緒にやれる。
合わないこともある
逆に、この環境ではしんどいだろうな、と思うタイプもある。
指摘を受け取る前に反射で防御が出る人。場の温度に関心が向かない人。
念のため書いておくと、これは人としての優劣の話ではまったくない。合う場所と合わない場所がある、というだけの話だ。
一人で深く潜って成果を出すタイプの仕事なら、まったく違う適性が要る。実際、そういう領域では僕のほうが明確に劣っている。うちの仕事は人と話すことが中心だから、この適性が効くというだけのことだ。
だから、合わない人を変えようとはしない。前に別の記事でも書いたが、それをやると双方が消耗するだけだ。
結論はシンプル
まとめると、こういうことになる。
素直に受け取れて、そのうえで自分の考えを言える人。相手の話をちゃんと聞いて、自分の言葉で返せる人。そして、一緒にいて感じがいい人。
シンプルすぎて、採用基準として書き出すと拍子抜けする。でも、これができる人は本当に少ないし、できる人と働いているときの仕事は、明らかに速くて楽しい。
スキルは後から身につく。素直さの上には、後からいくらでも積める。逆はかなり難しい。
だから僕は、これからもここを見て採用すると思う。