「モテる」を恋愛の言葉として扱うから、話がややこしくなるのだと思う。

かなり雑に定義してみる。

モテるとは、相手が望んでいることを、自然に、継続的に提供できて、しかもそれができる人が世の中に少ない状態。

これくらいに広げると、途端に見通しがよくなる。

具体的には

相手が望むものは、人によって違う。

話をちゃんと聞く。欲しいタイミングで欲しい言葉をかける。困っているときに動く。約束を守る。誘われたらフットワーク軽く顔を出す。知らない世界に連れていく。

何に価値を感じるかは相手次第だが、その人が望むものを提供できれば、当然好かれる。ここまでは当たり前の話だ。

大事なのは、そのあとに付く条件のほうだと思っている。

「自然に」が要る理由

無理をして提供しているものは、長く続かない。

そして、無理をしていることは、たいてい相手に伝わる。頑張っている感じが出た時点で、受け取る側には気を遣うコストが発生する。

だから重要なのは、自分にとってはそれほど苦ではないことが、相手にとっては大きな価値になっている状態だ。

こちらの持ち出しが小さいので、続けられる。続けられるので、相手も期待できる。この非対称が成立しているとき、関係はいちばん安定する。

逆に言えば、頑張らないと出せないものを売りにしていると、その関係は自分の余力が尽きた瞬間に終わる。

「継続的に」が要る理由

一度だけ良いことをしても、たぶんモテない。

一回の親切は好意を生むが、繰り返しは信頼を生む。そして、人が本当に求めているのは後者だと思う。

いつも聞いてくれる。いつも来てくれる。いつも約束を守る。この「いつも」が付いた瞬間に、その人は代替が効かなくなる。

希少性は、環境で決まる

そしてもう一つが、できる人が少ないという条件だ。

ここが面白いところで、希少性は自分の性質ではなく、環境で決まる

同じ性質が、ある場所では当たり前で、別の場所では非常に珍しい。人の話をちゃんと聞ける人ばかりが集まっている場所では、それは何の価値も生まない。誰も聞いていない場所では、それだけで重宝される。

だとすると、モテたい人がやるべきことは、自分を変えることより先に、場所を変えることかもしれない。

自分が自然に出せるものを、強く求めている人がどこにいるのか。それを探すほうが、たぶん早い。

自分の持ち物は、自分では見えない

厄介なのは、自分が自然にできることは、自分では価値だと気づけないことだ。

コストがかからないので、大したことをしている感覚がない。だから「自分には何もない」と思ってしまう。

前に、好きなことを探すより、感謝された経験を思い出すほうが早い、と書いた。ここでも同じだと思う。自分が苦もなくやったことで、なぜか妙に喜ばれた記憶。そこに、自分の持ち物が入っている。

自己申告では見つからない。外から返ってきたもので気づくしかない。

一方通行だと、消耗する

ここからは、注意点を2つ。

この定義は「価値を提供できる人がモテる」と読めるので、突き詰めると、無限に与える方向に行きやすい。

でも前に書いたとおり、与えるだけの関係は、続けるほどこちらが削られる。無理なく出せるものであっても、一方通行なら、いつかは枯れる。

モテている状態というのは、提供が続けられている状態のことだ。続けられなくなったら成立していない。だから、返ってくるものがあるかどうかは見たほうがいい。相手に求めるという意味ではなく、自分が枯れない関係を選ぶという意味で。

「モテない=価値がない」ではない

もうひとつ。

この考え方の危ないところは、モテていない人には価値がない、という読み方ができてしまうことだ。

そうではないと思う。

さっき書いたとおり、希少性は環境で決まる。求める人がいない場所にいるだけの話で、それは能力の欠如ではない。同じ人が、場所を移した途端に引っ張りだこになることは、普通にある。

恋愛については、これでは足りない

正直に書いておくと、この定義は恋愛だけは説明しきれない。

相性、タイミング、理屈にならない好き嫌い。価値提供とはまったく別の軸が明らかに働いている。そこを需要と供給で説明しようとすると、たぶん間違える。

だから僕は、この話を恋愛の攻略法としては使っていない。むしろ、恋愛から切り離したほうが使える概念だと思っている。

結局はマッチング

友人としてモテる人がいる。仕事でモテる人がいる。経営者としてモテる人がいる。

「たくさんの異性から好かれること」ではなく、「他者にとって価値のある存在であり続けること」くらいに捉えると、かなり普遍的な話になる。

そして、モテるかどうかは自分だけでは決まらない。

自分が自然に出せるものと、それを強く求めている人。この二つが出会って初めて成立する。

結局、モテもマッチングなんだと思う。