はっきり書いておきたいことがあるので、方針として残しておきます。

うちでは、働く人の尊厳と安全を、お客さんの機嫌より上に置いています。

順位をつけるのは気持ちのいい話ではありませんが、実際に何かが起きたときには必ず順位が必要になるので、先に決めて公開しておきます。

なぜそう決めているか

日本の接客業は、価格に対する提供水準が異常に高いところまで来ています。

前にも書きましたが、数百円の買い物でも、数千円の食事でも、高級ホテルのような振る舞いが期待される。品質が上がったぶん価格も上がったのなら健全ですが、実際には価格は据え置きのまま水準だけが上がってきました。

その差額は消えていません。現場で働く人の労働時間と感情が負担しています。

そして「金を払っているのだから何をしてもいい」という発想が乗ったとき、その負担は限界を超えます。ここを我慢で吸収させる店にはしたくない、というのが出発点です。

線をどこに引くか

うちが線を引いているのは、次のようなことです。

これらに該当する場合、以後のご来店をお断りしています。

念のため書いておくと、これは苦情を言うなという意味ではまったくありません。料理が遅い、対応が雑だった、期待と違った。そういう指摘は普通に受け取りますし、むしろ言ってもらったほうが助かります。改善できるのはそこだけなので。

線を引いているのは、苦情の内容ではなく、人の扱い方のほうです。

感情ではなく、運用として

お断りするときは、感情でやらないようにしています。

その場で言い返したり、対決したりはしません。淡々とお伝えして、それで終わりです。ご納得いただけない場合も、議論はしません。方針なので。

これは、判断を個人の裁量に委ねないためでもあります。基準が公開されていれば、現場のスタッフは「自分の受け取り方が過敏なのではないか」と悩まずに済みます。我慢するかどうかを毎回一人で判断させる状態こそが、一番よくないと思っています。

口コミについて

線を引けば、当然、外に何かを書かれることはあります。

それについては、特に言うことがありません。うちの方針はこうして公開してありますし、実際に来ていただいた方が受け取った体験もあります。読んだ方が判断すればいいことだと思っています。

反論も、説明もしません。する必要がないと考えています。

マニュアルについて

ひとつ補足を。よくある「クレーマー対応マニュアル」の類は、うちでは使っていません。

あの種のマニュアルは、要するに相手の機嫌をどう取るかの手引きになっていることが多い。それを配ると、スタッフより相手の機嫌のほうが大事だ、というメッセージを渡すことになります。

ただ、マニュアルそのものが不要だとは思っていません。必要なのは、別の種類のマニュアルです。

どこまでが許容範囲か。誰に、どの段階で引き継ぐか。お断りをどう伝えるか。退去いただけない場合はどうするか。判断を現場の一人に背負わせないための手順は、むしろ明文化しておくべきだと考えています。

「お客様は神様です」という言葉を、なぜか受け手の側が信じていることがあります。うちは、神対応を目指していません。目指しているのは、敬意が両方向に流れる状態です。

歓迎している人のこと

最後に、こちらが本題です。

こういう方針を出すのは、お客さんを選り好みしたいからではありません。まともな人が心地よくいられる状態を保つためです。

一人が横柄に振る舞うと、その場にいる全員の空気が悪くなります。スタッフだけでなく、周りのお客さんも損をします。守っているのはそちらです。

気持ちよく飲んで、気持ちよく帰る。スタッフとも普通に会話ができて、また来たいと思ってもらえる。そういう場所であり続けたいと思っています。

そのために線を引いています。それだけの話です。