Inazmaという社名について、たまに聞かれる。かっこつけてるんですか、と言われることもある。

結論から言うと、深く考えていない。5分くらいで決まった。

深センで浴びたもの

2019年の前半、僕は上海のCES Asiaと深センを訪れた。

そこにあったのは、はっきり未来だった。顔認証システムの画面には、顔と年齢が尋常じゃない速度で読み取られて表示されていく。自動運転用のカメラが何を読み取っているかも可視化されている。当時の日本から見ると、遠い道のりに思えた。

ただ、僕が持ち帰ったのは技術そのものではなかった。スピードこそが最も価値の高いものだ、という確信だ。

いいものを作れば勝てる、という話ではない。作って、出して、直すまでの回転数が違えば、時間が経つほど差は開いていく。あの街の空気は、そのことを理屈ではなく体感として押し付けてきた。

そして5分

その年の秋、テナントの話が具体的に動き始め、会社を早く作る必要が出てきた。

社名をどうするか。深センでスピードの価値を浴びてきたばかりの僕は、こう言った。

「どうせサービスを作っていく過程で会社名なんて変わっていく。名前にこだわらず、とにかくさっさと会社を作りましょう。スピードを意識できるように、イナヅマでいいんじゃないでしょうか」

半ば強引に決まった。ドメインの都合でスペルはInazmaになった。

2019年10月1日、株式会社Inazmaは、福岡市南区にある僕の自宅を所在地として誕生した。オフィスもない。住所だけの会社だった。

ロゴには1ヶ月かけた

面白いのは、その後の話だ。

社名は5分で決めたのに、ロゴの制作には1ヶ月かけている。スピード重視を掲げている会社なのに、だ。

理由ははっきりしている。ロゴは長期にわたってブランドの顔になる。一度決めたら、そう簡単には変えられない。だから時間を使う価値がある、と判断した。

一方、社名は変えられる。変えるつもりでつけた。実際、いつか社名変更が話題に上る日も来ると思っている。

つまり、何にでも速ければいいという話ではまったくない。どこで時間を使い、どこで使わないかを決めることが、スピードの正体だと思っている。

速く動けない組織の多くは、全部を丁寧にやろうとしている。逆に、雑に事故る組織は、時間を使うべきところにも使っていない。どちらも同じ病気の裏表で、判断の解像度が足りていないだけだ。

名前には、後から意味が乗る

この決め方を後悔しているかというと、していない。

社名を1ヶ月悩んでいたら、その1ヶ月は何も進まなかった。そして今では、Inazmaという名前は「スピード」というバリューの由来として説明できてしまっている。5分で決めた名前に、後から会社のほうが追いついた形だ。

名前が意味を決めるのではなく、やったことが名前に意味を与える。だとすれば、名前を決めるのに時間を使う必要はあまりない。

そのうち社名が変わる日が来たら、それはそれで、この会社らしいと思う。