「モテたいなら自分磨きをしろ」とよく言われる。
僕は、それよりも自分が価値を持つ市場に移動するほうが、圧倒的に手っ取り早いと思っている。
市場以前の基礎はある
とはいえ、何もしなくていいという話ではない。市場に出る前の、最低限の部分はある。
清潔感を保つ。髪やヒゲを整える。生活習慣を整えて、体調をまともにしておく。相手の話をちゃんと聞く。約束を守る。
これらは、モテるための技術というより、人と関わるための基礎だ。市場を選ぶ以前の話で、ここが崩れていると、どの市場に行っても同じことになる。
念のため書いておくと、これは他人の基準に体型を合わせろという意味ではない。医者として言うと、体重を落とすかどうかは健康の文脈で考えるべき話で、恋愛の話に混ぜるとろくなことにならない。ここで言っているのは、自分の状態を自分で管理できているかという話だ。
そこから先は、改造より移動
基礎から先が本題になる。
自分の価値を1から10にする努力も、もちろん大事だ。ただ、それには時間がかかるし、上限もある。
一方で、自分の「1」を欲しがる人がたくさんいる場所に移動するほうは、はるかに速い。
自分は何も変わっていないのに、周りの反応だけが変わる。前に書いたが、希少性は自分の性質ではなく環境で決まるからだ。同じものが、ある場所では当たり前で、別の場所では珍しい。
求める条件と、その場にいる人の分布が噛み合っていないなら、いくら自分を磨いても噛み合わない。分布のほうを変えたほうが早い。
医者はわかりやすい例
自分の業界で言うと、これは極端な形で起きる。
男子校で過ごし、周りに女性がほとんどいない環境にいた人が、病院に入った途端、周囲の人口構成が一変する。看護師も、技師も、事務も、女性の割合が高い。
本人が突然変わったわけではない。コミュニケーション能力が上がったわけでもない。単純に、周りにいる人の構成が変わっただけだ。
ここは誤解のないように書いておきたいのだが、僕は「だから職場で相手を探せ」と言っているのではない。むしろ、職場を出会いの市場として見るのは、立場の差がある以上かなり慎重であるべきだと思っている。
そうではなく、自分がどんな人口分布の中にいるかで、自分の見え方は簡単に変わる、という話だ。学校でも、職場でも、住む街でも、趣味の集まりでも同じことが起きる。
そもそも、不特定多数からモテる必要があるのか
ここまで書いておいてなんだが、いちばん言いたいのはこの先だ。
僕自身、「人生でめちゃくちゃモテたな」と思ったことは、正直あまりない。
でも、自分が好きになった人とはちゃんと付き合ってきたし、それなりに楽しくやってきた。
そう考えると、そもそも不特定多数から好かれる必要はないのかもしれない。
必要なのは、多数から好かれることではなく、自分が良いと思った相手と関係が成立することだ。この二つは、数の問題としてはまったく別物になる。
多数に好かれようとすると、平均的に受けのいい形に自分を寄せることになる。角が取れて、無難になって、結果として誰にとっても代替可能になる。前に書いたが、全方位に気を遣う人ほど記憶に残らない。
必要な人数は、そんなに多くない。
だから、順番はこうなる
まとめると、こういう順番になる。
まず、自分を最低限整える。ここは市場に関係なく必要な部分。
そのうえで、自分が持っているものを価値だと思ってくれる人がいる場所に行く。自分を作り変えるのではなく、置き場所を変える。
そして、そこで出会った中から、自分が良いと思う相手と関係を作る。全員に好かれる必要はない。
これは恋愛に限らないと思っている。
仕事も同じで、評価されない場所で必死に自分を変えるより、自分の性質が価値になる場所に移るほうが早いことがある。友人関係もそうだ。
自分を変える努力は尊いが、時間がかかる。場所を変えるのは、たいてい一日でできる。
