医師の長時間労働は規制されるべきか?④

引き続き、医師の長時間労働に関する要因をご紹介します。

3. 病院の売上

ひょっとすると、これが長時間労働に寄与する要因としてはかなり大きいのではないかと思います。

病院の売上は、主として、窓口収入と保険収入の合計である保険診療報酬です。
また、一般の企業と同様、医療機関も、単純化するなら、

利益 = 売上 – 経費

という式が成り立ちます。

この際、医療の特殊性が隠れています。

我々は日常的に消費税を支払いますが、医療機関において、患者が支払う医療費は非課税です。つまり、僕たちが医療機関を受診した際、その他ほとんどあらゆるお店で課される+8%の税金は存在しないのです。消費税+0%。

一方、医療機関は各種メーカーから様々な機材を仕入れます。点滴ひとつとってもそうですし、採血の針もそうです。紙カルテの病院であれば、カルテの紙もそうです。あらゆるモノが医療機関には存在しますが、それらを仕入れる際には消費税がかかってしまいます。

これが何を意味するかというと、売上の根幹である医療費には消費税がかかってこず、経費に伴う消費税は病院からの持ち出しになるわけです。
診療報酬がとてつもなく大きければ、消費税が増えようと医療費が非課税であろうと痛くも何ともないのかもしれませんが、現状、診療報酬はお世辞にも大きいとは言えません。

もちろん、多様な原因をはらんでいますが、多くの病院は赤字です。

病院数は 918(調査協力を依頼した病院数 3,067、回答率 29.9%)であり、その内訳は開設者別にみると、自治体病院 469(構成比 51.1%)、その他公的病院 216(構成比 23.5%)、私的病院 196(構成比 21.4%)、国立・大学付属病院等 37(構成比 4.0%) である。

今回の調査において回答のあった病院 629院のうち 31.0%(195 病院)の病院が黒字となっていて、赤字病院数の割合は 69.0%(434病院)であった。

平成 29 年 病院運営実態分析調査の概要

今年から、消費税は8%→10%に増税される予定ですが、それに伴う程度の診療報酬増とならない限り、持ち出しの消費税分経費は増大することとなり、病院の台所事情はますます厳しくなります。

では、病院が赤字だとどうなるか?ですが、多くの病院は医師にサビ残をさせています。それが加速することになると思います。
世の中には、労働時間を勝手に決められた上限を境にそれ以上の残業時間が自動的にカットされたり、医局に所属する大学院生という身分を人質にサービス労働させられている多くの医師たちがいるのですが、それら安価な労働力を使い倒す未来になるでしょう。

無給医についてはコチラが詳しいですので、参照ください。

なぜタダで働くのか?「無給医」たちの現実 ~医師の視点~

不思議なことに、医師は常勤医よりも非常勤医の方が賃金が高い現状があるため、実際は大学病院で無給医として働いている医師もアルバイトで生活は成り立ちますし、医局に逆らえないために泣く泣く受け入れている現状はあるかと思いますが、これらの大元の原因のひとつは病院の売上にあると言っても過言ではありません。

医療機関には効率化すべき多くの課題があり、それらによって、病院の経営の健全化は十分に可能だと個人的には考えていますが、一方で、医療費が非課税である、など、病院の内部からの改善だけでなく、外部からの改善も必要ではと考えます。

医師の長時間労働は規制されるべきか?という点について、それを阻害する要因を3つ紹介しました。

  1. 医師の権限
  2. 主治医制
  3. 病院の売上

他にも、多くの要因があると思います。

しかし、医師が長時間労働を行うことで被害を被るのは、医療サイドだけでなく、患者サイドも同様です。

徹夜明けの医師に自分の悪性腫瘍の手術をしてもらいたいでしょうか?大切なパートナーの手術なら?子どもなら?

長時間労働を支える要因は数多くありますが、僕は医師の長時間労働は規制されるべきと考えます。そのようなドラスティックな規制を行うことでしか、業界は何も変わらないのではとも思います。

現在、この働き方の問題について日々厚労省でも議論がなされているようです。今後の動向に引き続き注目したいと思います。