医師の長時間労働は規制されるべきか?②

前回の続きです。

医師の長時間労働に関係する要因をご紹介します。

2. 主治医制

これは医療従事者に関わらず、日本では一般的に普及している考えです。

「私の主治医は〇〇先生です」と言う人は少なくないのですが、患者サイドに自分と結びついている医師を固定させたいニーズがあるのかもしれません。

アメリカで医師として働いている友人が話すには、あちらではオンオフがはっきりしていて、チームで1人の患者を診るという考え方の下、特に診療は固定された1人が責任を負うことはないようです。
The 分業主義。コミュニケーションどうなっとるねん?などと疑問はわくかもしれませんが、個人的には非常に羨ましいです。

現状日本で一般的な主治医制では、主治医は患者や家族から治療の責任者であるという認識を持たれ、治療方針の変更や、現行治療の状況などについての説明は主治医が行うことを求められます。

主治医と担当医と複数人で診ることも一般的で、担当医が上記説明を行うこともあるにはあるのですが、一方で、「主治医から直接説明を受けたい」というようなニーズも根強いです。

少し話が変わりますが、実はこの「説明」というのが厄介でもあります。インフォームドコンセントというと一般の方も聞いたことがあると思いますが、患者や家族が病状を理解の下、受ける医療行為について自己決定していくための情報提供を行い、それに伴う合意形成をすることです。

もともと、インフォームドコンセントはアメリカをならって導入したということですが、単に導入しただけであるためか、これもかなり弊害があるのではないかと感じています。ただ説明して、同意書を渡してサインしてもらえればいいだろうと考えているような医療従事者は少なくないと思うためです。

現在の医療現場では、あらゆる行為に同意書を求めるケースが多く、その紙は増える一方です。医療訴訟に対する証拠のためだけにとっているのでは?と感じるケースもあり、同意書によって医療従事者と患者とのコミュニケーションが円滑になった、と感じた経験は少なくとも僕にはありません。

訴訟の経験はないのですが、経験者から話を聞く限り、医療訴訟における原因のほとんどはコミュニケーションエラーであり、患者と医師の関係性がうまく成り立っていないために起こるそうです。同意書を延々と取りまくる現在の医療現場がそれを解決しているかは甚だ疑問なのです。

話を戻します。同意書の紙地獄のように、単なる制度を導入するだけでは逆に仕事量が増えて本末転倒ということもあり得ます。

例えば、過重労働の要因のひとつである主治医制に対し、複数主治医制や主治医を置かずにチームで診る診療スタイルを導入するとします。

メリットとして、複数人の医師が1人の診療にあたれば、勤務時間外に常に主治医が呼び出しを受けたり、別の患者の対応をしている時にすら主治医が呼ばれてしまう現状は無くなります。もしかしたら、1人で抱える必要がなくなり、精神的にも楽になるかもしれません。

一方で、デメリットとしては、患者-医師間の信頼関係の形成が難しくなることは容易に想像できます。特に導入当初は医師がコロコロ変わっているがどうなっているんだ?人によって説明も違う?のような問題が起こるかもしれません。

そして、それに対してはより熱心な同意書取得が進行する恐れがあります。同意書で信頼関係の無さを担保するというわけです。ある意味、本末転倒かもしれません。

さて、とはいえ、労働基準法遵守や過重労働が問題になっている現在では、主治医がすべての責任を負い、深夜であっても予想外の急変時は駆けつける必要があるような勤務体制は見直す必要があることは間違いありません。

どのようにして導入するかについての私見はまた明日書きます。