昨日あたりからバズっている肝臓の区域のトピック。
肝臓の区域を覚えていなくても、肺の区域を覚えていなくても、脳の主幹動脈の分枝を覚えていなくても、医師国家試験に合格するにはまーーーったく問題ないのですが、個人的には覚えたらええやんって思ってます。
自分の専門分野を相手が当然知っているという前提を持つことは得策でないと思いますが、逆の立場では、自身の専門外の知識を増やして得はあれど損はないからです。
肝臓の区域
Tweets by 雑草外科医@北米(@multitransplant)先生
今回の我々の目標はCTでの区域の同定とします。まず肝臓を4つのSectorに分け、その後に8つのSegment(区域)に分けます。大切なのは各領域の境界が何であるかを正しく把握することです。これは主に『静脈』です。 pic.twitter.com/QRBgo5FXSF
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
1. Sector
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
Sectorを分けるのは肝鎌状間膜、Cantlie line(中肝静脈)、右肝静脈です。
まず造影CTでこれらのメルクマールを同定しましょう。肝鎌状間膜は肝臓のNotch(へこみ)で分かります。(LHVから出るUmbilical fissure veinでも同定できます) pic.twitter.com/12dQ3MNcWl
Cantlie lineの正確な定義はline running anteriorly from
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
a line between the long axis of the gallbladder fossa
and middle of the inferior vena cava as it lies in contact
with the liver posteriorly and transects the quadrate
lobeですか、CT読影では中肝静脈または胆嚢窩でよいです。
2. Segment
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
Sectorの分割に加えて、S2/3を分ける左肝静脈、S5/8, S6/7を分ける”portal arch"を同定します。portal archはCT axicialで右門脈が最も長く水平に見えるレベルを言います(引用写真のレベル)。まずこれを境に頭側のS78と尾側のS5/6を分けましょう。Left paramedian sectorはS4と同義です。 pic.twitter.com/Fbf6P4uzrc
S1=尾状葉(Caudate lobe)は?
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
これは定義が難しいです。Kumon先生の(1) Spiegel lobe; (2) paracaval portion; and (3) caudate process portionに分けて考える方法が一般的ですが、これはグリソンに基づいてた領域の考え方なので、S4, 5, 8と分ける境界は明瞭ではありません。
尾状葉の領域は肝静脈根部とportal trunkを結んだラインとすることが多いですが、Axialでは分かりませんので、国家試験で出た場合は、IVC周囲にべったり張り付いた領域とだけ覚えておけばOKです。私の指導した研修医で一人だけportionを答えてきた女医さんがいましたが、迷わず肝臓外科医にしました pic.twitter.com/YJRy6VXpl1
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
さあ、まとめましょう。複雑なスケッチなどする必要はありません。下記の私のお絵かきだけで十分です。あとはCTを1回見て確認すれば完璧です。 pic.twitter.com/v2q42bROpp
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
私が国家試験を解くなら
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
1.腫瘍は右側か左側か(MHV)
2.ParamedianかLateralのどちらのSectorか(RHVまたは鎌状間膜)
3.S2/3なら(LHV)で、S5-8なら(Portal arch)でSegment確定
写真数枚で同定させてる問題ではメルクマールが明白であると思います。
何にも難しくありません。必ず得点しましょう。 pic.twitter.com/MhaqXqDJL5
皆さん、気づきました?
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
肝臓区域は流入血管ではなく、静脈で決められているんです。でも肝切除するときには流入血管の支配領域に沿って切除します。そんな端的で直線的な区域切除となるわけないですね。特にS8のS7へのOverlapを考えずに肝切除して胆汁漏を起こす愚かな外科医は未だにたくさんいます。 pic.twitter.com/6NXSV3GRXZ
しまった!S7とS8のOverlapの画像を張り間違えた!こちらが正しいグリソン。(ヒト、3D再構成)
— 雑草外科医@北米 (@multitransplant) 2019年1月5日
やはり病み上がりでいろいろ書いてはいけないですね、すみません。 pic.twitter.com/Lq6Ds2A48f
解剖学習ツール
画像診断Cafe 上腹部CT こういったツールを開きつつ、上記Tweetを参照するとよくわかると思います。
個人的にはComplete Anatomyやヒューマン・アナトミー・アトラス などのiOSアプリケーションを用いながら解剖を確認しています。書籍のプロメテウスも全部持っているのですが、いつの間にか使わない不勉強な人間になってしまいました。。orz
おまけ
肝区域。
— いちは (@BookloverMD) 2019年1月6日
どうして、こういう分かりにくい番号のふりかたをしたのかというと、Couinaud先生がフランス人で、パリの住所と同じ考えでつけていると授業で教わり納得した記憶がある。
いや、正格に言うと、納得した記憶しかない。 pic.twitter.com/FQJrJC8Nxw
納得。知りませんでした(笑)。
肺の区域
ブロンコ体操
一方、肺にも区域があり、学生のときに覚えさせられた記憶があります。そして、使わない知識は往々にしてすぐに忘れてしまうものです。
気管支鏡検査をやる or きちんと見学するようになると少し見通しがよくなってきますが、そのような機会がない人でも覚えられるようにと考案されたのがブロンコ体操です。
長尾先生は呼吸器の本で大変お世話になりました。。
肝臓も体操つくるといいと思う(適当)。